「私にとって野球は人生です」
そう語り、昨日、そのグラウンドを去った稀代のスーパースター、長嶋茂雄。
生前の姿がTVやSNSを通じて怒涛のように流れてくるが、私の心に残る彼の姿は、
品のある情熱の人、
「袖振れ合うも多生の縁」を地で行く人、
「発信力のない国」と言われるこの日本で、きわめて発信力のある人、
生きるエンターテイナー、
そういった印象である。
11.5ゲーム差をひっくり返して優勝した1996年。
あのとき彼は「メークドラマ」と表現し、世間を魅了した。
カタカナの外来語と原語(元の言語)とでは、その意味や使い方が異なる場合が多い。発音に至っては、ほぼすべて違うだろう。
私はあの言葉を初めて聞いたとき、どうしても make drama という英語が先に浮かんでしまい、流行語大賞まで取ったそのコピーに対し、「ちょっとなあ……」と、昨日まで思っていた。
ところが、なんと。
昨夜の特集で流れた過去のインタビューで彼は、
「英語の表現としては間違ってるらしいんです。make it dramatic(メイク・イット・ドラマティック)が正しいらしいんですが、まあ、それはそれとして、わかりやすさで敢えて使いました」
と語っていた。
なんという思慮の深さか。
今や、サッカーも野球も、アスリートの活躍の舞台はワールドワイドに広がっている。
世界を目指すスポーツ選手にとって、外国語──特に英語力──は必須条件となっている。
カタカナ語としての「メークドラマ」で一世を風靡した長嶋のこの逸話は、スポーツを通じてグローバルに生きようとする若者にとって、ささやかではあるが、可能性を秘めた良い「英語の学び」になると思う。
今、どんな逆境にあっても、
九回裏が終わるまで、決して諦めず、
それをひっくり返して勝つ──
それが人生なのだという思いとともに。
野球少年よ、長嶋に続け。
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*タイトルの「野球の星に帰りました」は、子息一茂氏の表現
Omiya Stadium, Saitama Prefectural, where Shigeo Nagashima hit his only official home run in high school.
2025 Spring Saitama Prefecture High School Baseball Tournament Final