青春は短い。
チャンスが訪れるのは4年に一度。
ましてやそこで金メダルをとるのは簡単ではない。
それも2年連続で、しかも兄と妹で。
阿部詩選手の2回戦でその夢は順調に回り始めているかに見えた。
が、しかし、残り1分、あっという間もない0.2秒に悪魔の時が滑り込んだ。
一瞬あっけにとられた表情の詩。悔しさで立ち上がれない詩。
片膝で泣き崩れ、悔しさに肩を震わしながら魂の底からの叫び。
慟哭という言葉は、このような様子をいうのだろう。
少しの間があって、観客席から「ウタ、ウタ」という合唱のような励ましと拍手。
スポーツ観戦で、かつてこんなに心揺さぶられるシーンがあっただろうか。
その後の男子の試合で、妹の無念を晴らすかのように兄は金メダルを取った。
当初の夢こそ叶わなかったが、筋書きのないドラマに新たな感動を覚えた。
A basin with flowers