毎朝毎夕、上り下りする地下鉄の階段。
そこに表示されている案内表示をめぐる個人的な話。
出口へ続くせまい階段の壁に、日本語と英語の短文の案内が貼ってある。
英語の文を読んでしまったのがまずかった。
ちょっとした誤植(英語の)ではある。
しかし、どうやら眼から入る情報に脳が無意識に反応してしまうらしい。
こんなことに違和感を催すのは私だけかもしれない。
広義の「職業病」なのだろう。
英語に翻訳された訳文において、日本語原文の誤解や勘違いがないか。
スペルミス、数字の入力ミス、訳漏れ、事実考証、その他諸々。
いわゆる校正/校閲。
ささいな誤植にいつまでもひっかかるのは、そういった多角的視点からの注意力が求められる仕事に携わっていることの習い性に違いない。
多くの日本人にはどうでもいい話だが、その英文誤植に気づいてしまったのが運の尽き。
そこを通るたびに視界に入り、イライラとまではいかないが微妙な居心地の悪さを覚えてしまう。眼が勝手に思考してしまうのだ。
私的な違和感の整理のために、耐え切れず駅員さんにお伝えした。
少し時間はかかったが、とある日、それが修正されていた。
正された案内を目にした時、一瞬どこか解放感に似たすがすがしさを覚えた。
東京メトロさん、ありがとう。
お手数をおかけしました。
First edition
Corrected version