師走の深夜、人もまばらな通りに提灯の灯が燈(とも)った。
町のメインストリート沿いを、それらランタンの連なりが2.5メートルほどの高さで2ブロックにわたって設(しつら)えられている。
温かみのあるオレンジ色が、常ならぬ「年末」という世界を醸し出し、見る者の心を一瞬にして昔の時間に引き込んでしまう。
同じ光景をこれまでに何度も観たはずだが、引き込まれるような懐かしさを覚えるのは、眺める自分の感性が変わったからなのか?
ふと安らかさを感じるのは、体の奥に潜んでいた幼いころの記憶があるいは過去の身近な人々の温かさのメモリーが反応しているからか?
慌ただしい日々の営みの中に埋没していた穏やかな時代の雰囲気が、年の瀬の提灯飾りによって呼び起された。
そんな感傷を抱いて地下鉄の階段を下りながら、同時にもう今年も終わってしまうとの焦燥感も首をもたげる。急がねばならぬことばかりだと・・・。
提灯は来年の正月明けまで人形町通りを飾るはずだ。
A line of lit paper lanterns