仕事帰りの地下鉄。疲れ果てた心と体の重みを、つり革の助けを借りながら宥めていた。
そのとき、ぐいと引き込まれた新聞コラムの一文。
“・・・。60回ぐらいボツにされた。
「よくも、こんなものを読ませたな」と愛の拳で殴られ、ちまみれにもなりました。僕は自分の力の無さを責めた。必死に食らいつくうちに、直木賞をもらいました。”
(日本経済新聞2013年2月13日夕刊文化欄車谷長吉氏談話)
疲れが消え去り、目が冴えてきた。
自分はまだまだ足りないのではないか? 甘い。電車が地下から地上に出て目的駅を降りるころには、「やらなければ」という気合がにじみ出てきていた。
2月の風は冷たい。しかし、まだまだ足りないぞ。
寒さよ、もっと寒くなれ。凍えさせろ。俺を目覚めさせてくれ。
寒肥えの時期は貴重だ。
雪に映える冬椿